韓国の伝承に登場する冥府の使者、イムギ(大蛇)、九尾狐が、本格ローグライクのルールとして生まれ変わった。
1人開発会社Sungki Soft(ソンギソフト)が、韓国の説話を題材にしたターン制ローグライクRPG**『ソルファダンジョン(Seolhwa Dungeon: Roguelike RPG)』**をモバイル向けにリリースした。Android版は10月1日にGoogle Playで、iOS版は10月4日にApp Storeで配信を開始している。
『ソルファダンジョン』は、一度死ぬと最初からやり直しとなり、新しくゲームを始めるたびにダンジョンの構造が変わる、本格的なローグライク方式で制作されている。ドット絵で描かれた銀鉱、王陵、沼、九尾狐の巣窟を経て、最終目的地である冥府まで降りていくことが目標だ。
銀鉱から九尾狐の巣窟へ——最終目的地は冥府
プレイヤーが通過しなければならない主要ダンジョンは全4か所だ。
トッケビ(韓国の鬼)の火が漂う銀鉱を皮切りに、棺の蓋が開いた王陵、濃い霧に覆われた沼、九尾狐の巣窟を順に探索する。最終目的地の冥府へ降りるには、冒険の途中で2つの珠を見つけなければならない。メインダンジョン以外にも、智異山(チリサン)や竜宮など、それぞれの物語を秘めた7つのサブダンジョンが用意されている。
一度死ぬと、その冒険はそこで終わる。しかし再挑戦するときは、ダンジョンの構造や遭遇する状況が変わる。新たなキャラクターやアイテム、出来事と出会いながら、毎回異なる冒険を体験できるローグライクならではの面白さを活かしている。
名前を3回呼ばれたら死ぬ——説話そのものがゲームのルール
『ソルファダンジョン』で最も目を引くのは、韓国の説話の活かし方だ。説話の存在を単に敵やキャラクターとして登場させるだけでなく、それぞれの物語を実際のゲームルールとして落とし込んでいる。
代表的な例が冥府の使者(チョスンサジャ)だ。冥府の使者は、プレイヤーが視界に入っている間、毎ターン名前を1回ずつ呼ぶ。名前を3回すべて呼ばれると、プレイヤーは命を落とす。冥府の使者に出会ったときは、単に攻撃力で競うのではなく、視界から外れる、あるいは素早く状況を打開するといった判断が求められる。
イムギも、説話の特徴をゲームに反映している。戦闘が長引くと竜へと昇天し、フロア全体を水没させてしまう。
ダンジョンを探索していると、葬列(喪輿)と出くわすこともある。プレイヤーは道を譲って礼をするか、そのまま行く手を遮るかを選べ、選択によって異なる結果が待っている。
プレイヤーが信仰する神もゲームに影響を与える。山神、竜王、サムシンハルミ(出産と子育ての女神)など8柱の神から1柱を選べるが、神ごとに守らなければならない禁忌が存在する。
さらに、14種類の種族と12種類の職業を組み合わせられる。冒険中に出会った妖怪は図鑑に記録され、ゲーム内での特徴だけでなく、その存在が登場する元の説話もあわせて確認できる。App Storeの紹介によると、登場する妖怪は134種類にのぼる。
本格ローグライクを片手で——オフラインプレイにも対応
複雑な本格ローグライクをスマートフォンで快適に遊べるよう、モバイル環境に最適化している点も特徴だ。ゲームは縦画面で、片手で操作できる。インターネット接続やアカウント登録も不要で、オフラインでもプレイ可能だ。
1回の冒険にかかる時間は約40分〜2時間。繰り返し探索する負担を減らすため、自動探索や自動戦闘機能も備えている。成長システムにはカード選択方式を採用しており、レベルアップのたびに複数のカードから1枚を選んで能力を強化するため、同じ職業を選んでも選択次第で毎回異なる成長を楽しめる。
ゲームは基本無料。一部の種族と職業を解放する「説話全集」が唯一の有料商品で、広告はプレイヤーが復活を選んだときにのみ表示される。対応言語は韓国語と英語だ。
『Dungeon Crawl Stone Soup』をスマホで遊びたかった1人開発者
『ソルファダンジョン』は、Sungki Softのペ・ソンギ氏が1人で作り上げた作品だ。
開発のきっかけは、本格ローグライクへの愛情だった。ペ氏は、子どもの頃に遊んだPCローグライク『Dungeon Crawl Stone Soup』のようなゲームを、スマートフォンでも快適に遊びたいと考え、自ら開発に乗り出したと明かしている。
開発過程では、コードの基礎的な骨組みやデザイン作業などにAIの助けも活用した。
正式リリース後は、ユーザーの意見を反映したアップデートが素早く続いている。iOS版は10月4日のバージョン1.0を皮切りに、1.1、1.1.1、1.1.2、1.2、2.0を経て、最新の2.1までアップデートされた。
特に2.0アップデートでは、種族や職業をはじめ、約200種類に及ぶ妖怪のグラフィックを新たに描き直した。2.1では、ユーザーと直接交流するための公式Discordチャンネルも開設している。
リリース初期の評価は4.6点、意見を反映した迅速なアップデート
リリース初期のため、まだ十分な数のユーザー評価が集まっている段階ではないが、反応は好意的だ。確認時点で、App Storeでは11件の評価で5点満点中4.6点を記録している。ユーザーは、手強い難易度にもかかわらず再挑戦したくなるローグライクならではの面白さや、韓国の説話を活かしたユニークな設定に好意的な反応を示している。
リリース直後から続く迅速なアップデートと、開発者のフィードバック対応も高く評価されている。
編集部コメント
「冥府の使者に名前を3回呼ばれると死ぬ」「長く戦ったイムギは竜となって階層を水没させる」——説話の筋書きをそのままゲームのルールに変換する手法は、妖怪や神々を単なる見た目の差し替えに終わらせず、プレイヤーの判断そのものに文化的な意味を持たせている。葬列に道を譲るか遮るか、信仰する神の禁忌を守るかといった選択も、韓国の民俗的な価値観を体験として伝える仕掛けだ。日本の読者にとっても、九尾狐や竜宮、山の神といったモチーフは馴染み深く、日韓で共有する伝承の違いと共通点を楽しめるだろう。
『Dungeon Crawl Stone Soup』に憧れた開発者が、縦画面・片手操作・オフライン対応・自動探索といったモバイルならではの工夫で本格ローグライクを再構成した点も評価したい。課金は「説話全集」のみ、広告は復活時のみという良心的な設計で、リリース後わずか2週間あまりでバージョン2.1まで更新を重ねるスピード感も、1人開発ならではの機動力といえる。現時点で日本語には対応していないが、英語で遊べるので、ローグライク好きはぜひ冥府への旅に挑んでみてほしい。







