昨年1年間で、Steamには過去最多となる19,112本のゲームがリリースされた。1日平均52本、つまり1時間に2本以上の新作がストアに並んでいる計算になる。さらに、1日でゲームを完成させてしまう「AIワンクリック開発」の時代を迎え、市場に投下されるゲームの量は刻一刻と爆発的に増え続けている。

Valveがタグを作り替えた日
2026年5月18日は、ValveがSteamのタグ体系を大規模に刷新した日だ。17のタグが新設され、21のタグが消えた。そしてこのリストをじっくり読み解くと、いまPCゲーム市場で何が起きているのかがそのまま浮かび上がってくる。
新設されたタグのなかには Desktop Companion(デスクトップコンパニオン) がある。デスクトップの片隅に居座り、ユーザーとともに「存在する」だけの、従来の意味での”プレイ”とは呼びにくいソフトウェア群が、ついに一つのジャンルとして公認されたということだ。Bullet Heaven の新設により、『Vampire Survivors』系統はようやく公式な名前を得た。そして従来の Clicker は Incremental へと改称された。対照的に、「Masterpiece」「Cult Classic」「Well-Written」といった、作品の格を評価する主観的なタグは整理され、姿を消している。
プラットフォームが何に名前を与え、何を消すのか――それ自体が一つの市場レポートである。つまりValveは「傑作」を分類する仕事をやめ、ユーザーのゲーム消費のされ方を軸に分類し始めたのだ。
第一の道:流行の軸――ゲームはいまSNSと戦っている
ゲームの競合相手は、もはやゲームではない
『MECCHA CHAMELEON』によって完成形を見たパーティーゲームと、友人と一緒に笑って終わる多種多様な フレンドスロップ(Friendslop) 系タイトル。コンセプトもスタイルもばらばらだが、これらが共有する構造は一つしかない。短く、軽く、即座に笑わせ、そして消費し尽くされる。
これはゲームの出来が悪いからではない。ゲームの競合相手が変わったからだ。今日、プレイヤーの夜の2時間を奪い合っているのは別のゲームではなく、ショート動画とSNSである。30秒ごとに報酬が突き刺さるメディアと同じ「可処分注意」の市場で戦う以上、ゲームのリズムもそちら側へ引きずられていく。すなわち、世代交代にともなうゲームのショート化は、ゲームの堕落ではなく時代への適応である。
そしてこの軸で通用する原則は単純だ。刺激的に、短く太く、より速く楽しませる。
重要なのは、この軸のユーザー層がメインストリームであり、かつ若年層が中心だという点である。彼らはSNSの大きな流れを主導し、トレンドに敏感で、一つのゲームを長く掘り下げることはない。彼らは消費すべき次のゲーム、すなわち**次の”素材”**を絶えず探し続ける。だからこそ彼らが探す場所はSteamストアではなく、ショート動画、TikTok、そして配信チャンネルなのだ。彼らは流行を作り出す側であると同時に、絶えず流行を追いかける側でもある。
厚いユーザープール → 絶え間ないゲーム消費 → SNSでの流行 → さらなるユーザープールの拡大
インフルエンサーは、ヒットに対してもっとも敏感なアンテナを持つ集団である。彼らは跳ねそうな素材を嗅ぎ分け、真っ先に乗る。つまりこの軸におけるマーケティングの本質は「インフルエンサーにキーを配ること」ではなく、インフルエンサーが乗りたくなる素材をあらかじめ作っておくことだ。
この軸で通用する設計原則
最初の30秒でゲームのすべてが見えなければならない。 チュートリアル、世界観説明、徐々に開放されるシステムは、この軸ではすべてコストでしかない。
クリップになる場面が、ゲームの中に設計されていなければならない。 プレイヤーが吹き出す瞬間、あるいは悲鳴を上げる瞬間が、意図的に、反復可能に、短い間隔で配置されている必要がある。基準は「プレイすると面白い」ではなく、「見ているだけで面白い」ことである。
開発期間と価格は、流行の半減期より短くなければならない。 流行の軸において18か月の開発計画は、それ自体がすでに失敗した設計だ。AI主導の開発が現実となったいま、流行を察知してからリリースまでのサイクルを3〜6か月以内に圧縮できないのであれば、この軸に立たないほうがいい。
タイミングはクオリティに勝つ。 冷徹に言えば、この軸では2か月早く出た80点が、2か月遅れた95点に勝つ。
この軸の落とし穴
流行には半減期があり、後発組の墓場は常に先頭集団の表彰台よりはるかに広い。そして何より、この軸で得た成功はチームのアイデンティティとして蓄積されないため、次回作では常にゼロから始めることになる。一度の偶然の大当たりが、スタジオの持続可能性をまったく保証しないということだ。したがってこの軸を選ぶなら、設計すべきは一度のヒットではない。技術に勝る創造的センス、トレンドの先を行く挑戦心、そして数十回は打席に立つという覚悟で、自らの開発体力そのものを設計する必要がある。
第二の道:ジャンルニッチの軸――信頼を売る市場
まったく異なる消費者
Steamの購買層のもう一方の端には、まったく異なる集団がいる。彼らは自分の好きなゲームを慎重に選び、着実に、ゆっくりと消費していく。流行には反応しない代わりに、検証され信頼できるコンテンツには財布を開く。そして一度信頼を預けた開発元の次回作を、じっと待つ。
CRPG、ハードコアストラテジー、サバイバルクラフト、正統派メトロイドヴァニア、シミュレーション、リズム、シューティング。数は流行の軸より小さいが、火は消えない。 流行の軸の成功曲線が数日で跳ね上がり1か月で消えるスパイクだとすれば、この軸の曲線は低く長く続く高原である。そしてその高原の上で、自分の作品を待つファン層と対話しながら続編を作っていくことになる。
第一条件:開発者自身がそのジャンルのコア消費者であること
この軸に立つための第一の条件は、技術でも資本でもない。
開発者本人が、自分自身が、そのジャンルのコア消費者でなければならない。
ニッチジャンルのユーザーは、コンセプトアート1枚から、デモの構成だけから、作り手が本当にそのジャンルを愛しているかどうかを見抜く。ジャンルの文法を表層だけ模倣したゲームは、コミュニティで真っ先に、そしてもっとも容赦なく振るい落とされる。つまりこの軸における「ジャンルへの誠実さ」は、市場調査では代替できない領域であり、マーケティング手法を超えた開発者自身の矜持なのだ。
メカニクスの理解が、レベルデザインの深さを決める
そのジャンルのユーザーが何に訴求されるのか――どのコンセプトに、どの特徴に、どの瞬間に反応するのか――を鋭く狙い撃たなければならない。そのためには、ジャンルのコアメカニクスを明確に理解する必要がある。
ここで言う「理解」とは、ソウルライクにはパリィがあり、ローグライクにはパーマデスがある、といったレベルのリストアップではない。そのメカニクスがなぜ面白さを生み出すのか、どういう条件で破綻するのかを知ることである。回避の無敵フレームが何フレームかによって、戦闘の性格そのものが変わる理由を説明できなければならない。
メカニクスへの完全な理解なしに、まともなゲームデザインは組み上がらない。プレイコンセプトの独創性はレベルデザインをより困難にするため、かえってインディー開発者の足を引っ張ることになる。ジャンルユーザーがあなたのゲームに期待しているのは革新や独創ではなく、革新と独創を装った、検証済みの馴染み深い面白さ――つまり自分が買ったそのジャンルのゲームに対する、支払った対価以上の満足体験である。だからニッチユーザーはコンセプトから入ってきたとしても、最終的にはそのジャンルの名作との比較のなかで、レベルデザインの深さも含めてゲームを評価する。 ボリュームではない。深さだ。
着手する前から対話を始めよ
この軸のマーケティングは、リリース3か月前に始めるものではない。開発に入る前から始まっている。
アートコンセプト、ゲームコンセプト、コアメカニクスの方向性を初期段階から当該コミュニティに晒し、彼らと対話し、なぜこのゲームを作るのかを説得していく。この過程でチームは二つのものを同時に得る。一つは設計の検証であり、もう一つはリリース前にすでに確保された購買層である。
流行の軸のマーケティングが「発見されること」だとすれば、ニッチの軸のマーケティングは**「自分のゲームを買ってくれるユーザーと、あらかじめ信頼を積み上げていくこと」**だ。「このゲームは自分が必ず買わなければならない」という購入の大義を植えつける必要があり、決済――すなわち支払いのプロセスにおける信頼は、短期間で構築できるものでは決してない。
最悪の選択は「中間」である
Steamで静かに消えていくゲームの大半は、決して出来の悪いゲームではない。どちらの軸にも属していないゲームである。
最近流行しているゲームの軽さを追いながら、開発には3年を真面目に費やした。逆に、ニッチジャンルの文法を標榜しながら、そのジャンルの深さとコアレシピを知らない。SNSで跳ねるには真面目すぎ、コアユーザーを説得するには浅すぎる。結果として生まれるのは、どの課金集団にも属さない、曖昧なゲームだ。
「良いゲームを作れば、いつか気づいてもらえる」――成功した一部のインディー開発者が残したこの言葉は、数え切れないほどのスロップ(粗製濫造)ゲームの海のなかで、いまや慰めというより放置に近い。良いゲームはすでに山ほどある。ウィッシュリストに入っている名作も大作も、常に破格の値引きで先に買われていく。核心は良いゲームを作ることだけではなく、自分のゲームを誰に、どのような経路で、必ず買わせるのか――その明確なターゲティングと、緻密な購買誘導戦略である。
文:チョン・ムシク教授(ガチョン大学ゲーム映像学科副教授/工学博士)
政務式教授は?
1994年にトリガーソフト創業メンバーとして出発し、NCソフトディレクター、ナスダック上場会社のグラビティの社外取締役、ルノーソフトの副社長を歴任した大韓民国第1世代ゲーム開発者だ。 2003年韓国初のインディーゲーム公募展を企画、開催した以来、国内インディーゲームの育成に長年の関心と支援を続けており、現在文化体育観光部ゲーム物管理委員会委員/理事、城南市第4次産業特別委コンテンツ/デジタル/空間分課長などを引き受け、国内ゲーム産業の発展と件。