「愛」とは何かを問い直す60分間の体験。日本発の1人開発タイトルが、アジア最大のインディーアワードで二冠の快挙。
2026年 1月 29日 | インディーゲームドットコム 編集部
日本の個人開発者 Yona氏(TearyHand Studio)が手掛けた『and Roger』が、1月28日に開催された「台北ゲームショウ 2026 インディーゲームアワード(IGA)」にて、最高賞である**大賞(Grand Prix)および最優秀オーディオ賞(Best Audio)**を受賞しました。
世界51カ国から集まった515作品の頂点に立った本作は、認知症を患う女性の視点を通じて「家族の愛」を描くポイント&クリック形式のビジュアルノベルです。
■ 「ラベルのないボタン」が伝える、認知症の混乱と絶望
本作の最大の特徴は、台詞やテキストではなく**「ゲームプレイそのもの」**で認知症の症状を表現している点にあります。
- 混乱の操作感: 歯を磨く、手を洗うといった日常的な動作を行う際、画面上のボタンには何のラベルも表示されません。プレイヤーは「どのボタンがどの動作か」を自ら探し、記憶し、正しい順序で実行しなければなりません。
- 深まる謎: 目の前にいるはずの夫が「見知らぬ男」に見え、自分に薬を強要する恐怖。プレイヤーは主人公ソフィアの視点を通じて、世界が少しずつ崩れていく不安を直接体験することになります。
「審査員がプレイ中に涙を流した」
授賞式の際、国際審査員団から明かされたこのエピソードは、本作がいかに強力な感情的インパクトを与えたかを象徴しています。特に物語の終盤、バラバラだった記憶が「愛」という一つのキーワードで繋がる演出は、多くのプレイヤーの心を揺さぶりました。
■ 1人開発者 Yona氏の哲学:「ゲームプレイ自体に語らせる」
開発者のYona氏は、講談社ゲームクリエイターズラボの支援を受けつつ、企画からシナリオ、アート、プログラムまでをほぼ独力で完遂しました。
「テキストを最小限に抑え、相互作用を通じて物語を伝えたかった」と語るYona氏は、名作『Florence』から強い影響を受けたと公言しています。本作のタイトル『and Roger』の結末に込められた聖書の一節、「信・望・愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である」というメッセージは、宗教の枠を超えて普遍的な感動を呼び起こしました。
■ 世界が認めた「芸術性」と「オーディオ」
本作はオーディオ部門でも最優秀賞を受賞しました。
可愛らしいメロディから始まり、徐々に不協和音や不気味な静寂へと変化していくサウンドデザインは、主人公の不安定な精神状態を完璧に代弁しています。すでにBAFTA(英国アカデミー賞)の「Game Beyond Entertainment」部門にノミネートされるなど、その芸術性は世界最高峰の舞台でも認められています。
📋 作品情報:and Roger
| 項目 | 内容 |
| 開発元 | TearyHand Studio (Yona) / 日本 |
| パブリッシャー | 講談社ゲームクリエイターズラボ |
| リリース日 | 2025年 7月 23日 |
| 受賞歴 | TGS 2026 IGA 大賞、TGS 2025 SOWN 三冠、BAFTAノミネート他 |
| 対応言語 | 日本語、韓国語、英語、中国語(繁体/簡体)他 |
| 価格 / セール | 2月11日まで30%OFFセール実施中 |
スチームページ: https://store.steampowered.com/app/3308870/and_Roger/
ゲームによる深い共感、インディーゲームの芸術的可能性を証明
「アンドロジャー」の成功は、商業の華やかさより真正な叙事詩と感情的な深さで勝負するインディーゲームの可能性をもう一度立証した代表的な事例だ。認知症という社会的に重要だが、ゲームではあまり扱われていなかったテーマを正面に取り上げ、ゲームが単純な娯楽を超えて芸術的表現媒体として深いメッセージを伝えることができることを如実に示した。
特に、ゲームプレイ自体を通じて患者の混乱と苦痛を伝える独創的なアプローチは、他の媒体では不可能なゲームだけの固有の表現方式で提示したという点で意義が大きい。
1人の開発者YonaとTearyHand Studioは今回の受賞で日本インディゲーム開発の新たな可能性を提示し、信仰に基づくストーリーテリングが普遍的な感動に昇華できることを証明した。 ‘and Roger’が見せた感動的な叙事詩と芸術的完成度は、インディーゲームが進む方向を提示する重要なマイルストーンになると期待される。




