『ニード・フォー・スピード』ライターの新作。資金難による苦肉の策か、それとも創作倫理の問題か。

2026年 1月 21日 | インディーゲームドットコム 編集部

インディースタジオ Superboo Studios が開発中のダークファンタジー・アクションアドベンチャー**『Fallen(フォールン)』**の公式トレイラーを巡り、生成AIによって作成された画像が大量に含まれているのではないかという疑惑が浮上し、波紋を広げている。

[AI使用論議で話題の中心に立ったSuperbooの’Fallen’トレーラー]

■ 「AI画像はあくまでプレースホルダー」開発側が釈明

疑惑のきっかけは、公開された最新トレイラーのグラフィックや演出の一部が、従来の制作手法とは異なるAI特有の質感を持っているとユーザーから指摘されたことだった。

これに対し、本作のディレクターであり『Need for Speed: Hot Pursuit』のシナリオライターとしても知られる**ブルック・バージェス(Brooke Burgess)氏は、スペインのゲームメディア「3DJuegos」の取材に対し、AI画像の使用を認めた。しかし、それらはあくまで「プレースホルダー(一時的な代用素材)」**であり、最終的な製品版では置き換える予定であると釈明している。

■ 150万ドルの資金調達難と、投資家からの「AI活用」提案

バージェス氏がAIに手を伸ばした背景には、深刻な資金難がある。現在、本作は開発完遂のために**150万ドル(約2億2千万円)**規模の投資を募っているが、冷え込むゲーム業界の投資環境の影響もあり、難航しているという。

「Games Industry」のインタビューによれば、多くの投資家やパブリッシャーが本作のコンセプトを高く評価しながらも、実際の出資には慎重な姿勢を見せている。中には、コスト削減策として**「AI技術をもっと積極的に活用すべきだ」**と提案する投資家もいるという。

こうした圧力に対し、バージェス氏はQA(品質管理)やローカライズ、補助的なアニメーション作業でのAI活用には含みを持たせつつも、**「シナリオ執筆やキャラクターの台詞制作には、絶対にAIを使わない」**と宣言。ゲームの魂とも言えるナラティブ(物語体験)の領域は、人間の手で守り抜くという決意を示している。

■ 『Dante’s Inferno』との類似性と独創性への懸念

本作はPS3/Xbox 360世代のアクションゲームの黄金期を意識した、三人称視点のアクションアドベンチャーだ。地獄を舞台に、堕天使「アストラ(Astra)」が失った力を取り戻す旅を描く。

しかし、地獄という設定や三人称視点のアクション、宗教的なモチーフなど、2010年の名作**『Dante’s Inferno(ダンテズ・インフェルノ)』**に酷似しているとの指摘も一部メディアから上がっている。AI使用疑惑に加え、作品の独創性を巡る議論も避けられない状況だ。

■ 業界を揺るがす「AI論争」の再燃

今回の騒動は、昨年末に発生した**『Clair Obscur: Expedition 33』のGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)剥奪事件**を想起させる。同作は生成AIの使用が判明したことで、権威ある「インディーゲームアワード」の各賞を取り消されるという異例の事態に見舞われた。

インディーデベロッパーが限られた予算でAAA級のビジュアルを目指す際、AIは魅力的なツールに見えるかもしれない。しかし、ユーザーコミュニティの視線はかつてないほど厳しくなっており、今回の『Fallen』の事例は、AI技術の活用範囲を巡る業界全体のジレンマを象徴するものとなっている。

Jaechung Lim

インディゲームドットコム編集長, 1990年代に「デジタルライフ」および「ゼウメディア」でゲーム専門記者としてキャリアを開始。その後、複数のマーケティング代理店、開発会社、パブリッシャーを経て、バンダイナムコグループにおいて10年以上にわたり、IPを活用したオンラインゲームおよびモバイルゲームの開発ならびにグローバル事業を主導してきたゲーム業界の専門家である。 現在は、国内外のインディーゲームに関するコンサルティングおよびメンタリングを行うとともに、数多くのコンテストや政府支援事業の専門審査委員として活動している。また、Indiegame.com を通じて、健全なゲーム文化の醸成およびスタートアップならびにインディーゲームの発展に尽力している。